本記事では、次の悩みを解消します。
- 「イップスって何?」
- 「イップスを克服したい…」
本記事の内容はこちら。
- イップスとは
- イップスの克服方法
記事の信頼性は、次のとおり。
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)として、ラグビーやバレーボール、フィットネスクラブの指導を経験。
筆者自身、高校生の頃、イップスを経験したことがあります。
なので、「イップスを克服するためのヒントを提供できれば…」という思いから記事にしました。
ぜひ悩んでいる方の参考になれば嬉しいです。
早速、見ていきましょう。
目次
1.イップスとは

「そもそもイップスって何?」
そんな方のために以下の記事では、「イップスとは何か?」をはじめ、症状や原因、イップスになりやすい人について分かりやすくまとめています。
「イップスについて詳しく知りたい」
という方は、ぜひ一度ご覧になることをおすすめします。
-
-
「野球選手が経験するイップスとは」原因や症状をわかりやすく解説
続きを見る
-
-
「野球においてイップスになりやすい人の特徴とは」論文をもとに解説
続きを見る
2.イップスの克服方法

イップスの克服方法は、以下の5つに分けて紹介します。
- 早期に暴投の原因を精神的なものと思うこと
- 時間的な間を置く
- 自律訓練法,動作訓練法およびカウンセリング法
- チームメイトに相談する
- キャッチボールの相手を変える
それぞれ見ていきましょう。
2-1.早期に暴投の原因を精神的なものと思うこと
イップスを克服するためには、早期に暴投の原因を精神的なものと思うことが有効とされています。
なぜなら、ある研究によって次のように述べられているからです。
多くの選手は暴投が続いたときにまず自分の技術不足を疑う。
引用 複線径路・等至性モデル(TEM)による送球イップス経験者の心理プロセスの検討3)
しかしどれだけ練習を繰り返しても暴投が続くことから精神的なものが原因ではないかと思い始め,原因が技術的なものか精神的なものかの葛藤に苦しみ始める。
この期間は選手によって様々であり,この期間が長くなるほど長期間に渡りイップスに苦しむ。
またこの葛藤期間が選手にとって一番辛く苦しい時である。
逆に早期に精神的なものが原因であると思い始めた選手は,葛藤に苦しむことなくイップスを克服すべく試行錯誤し始めている。
よって、次のような現象が起きた場合は、技術的なものではなく、精神的なものと思うことが克服への近道かもしれません。
- 「暴投が多い…」
- 「近い距離ほど投げるのが怖い…」
- 「緊迫した場面での送球ミスが多い…」
したがって、イップスを克服するためには、早期に暴投の原因を精神的なものと思うことから始めてみましょう。
2-2.時間的な間を置く
イップスを乗り越えるためには、時間的な間を置くことが有効とされています。
なぜかと言うと、ある研究によって次のように報告されているからです。
イップスが発症してから抜け出すまでの過程において,CさんとEさんは時間的な間を置くことで,送球に対する考え方を変えることができるようになり,キャッチボールもできないという重度のイップス状態にあったBさんとFさんも時間的な間を置くことで場面によって送球できるようになっていた。
引用 複線径路・等至性モデル(TEM)による送球イップス経験者の心理プロセスの検討3)
しかし、ここで次のような疑問が浮かび上がるのではないでしょうか。
- 「監督やコーチに言えない…」
- 「練習なんて休めない…」
上記の解決方法について、参考までに以下をご覧ください。
- 「監督やコーチに言えない…」
・キャプテンやマネージャーから指導者へ伝えてもらう - 「練習なんて休めない…」
・送球を必要とする練習のみ休ませてもらう
つまり、勇気を持って練習を休むことがイップスの早期克服につながるかもしれません。
2-3.自律訓練法,動作訓練法およびカウンセリング法
自律訓練法,動作訓練法およびカウンセリング法は、イップスの克服に効果的だとされています。
なぜなら、岩田ら(1981)の研究では、次のような効果が報告されているからです。
予期不安,他者評価へのこだわり,過緊張などの心理的緊張の低減や投・送球のコントロールの改善を得たと報告している。
引用 投・送球障がい兆候を示す中学校野球部員の心理的特性1)
では、具体的な方法を見ていきましょう。
本記事では、自立訓練法に焦点をあてて紹介します2)。
まずは、自律訓練法の適用について次をご覧ください。
自律訓練法は,不安や緊張に由来する身体症状を緩和する治療法であり,どのような疾患であっても,その症状の発症や持続に不安や緊張, もしくはストレスが関与していることが明らかな疾患であれば,自律訓練法の適用が可能であるといえる.
引用 心身症における自律訓練法の適用2)
次に、禁忌事項について以下を確認をしましょう。
- 心筋梗塞
- 糖尿病で長期間の医学的監視が困難な場合
- 低血糖状態
- 退行期精神病反応、迫害妄想、被害も妄想を示す
- 急性精神病変、統合失調的反応が激しいとき
- 極度に不安感や焦燥感が亢進しているとき
- 消化性潰瘍の活動期
禁忌事項を確認したあとは、次の流れに従って自律訓練法を行います。
- 静かな環境を整え、仰臥位、単純椅子姿勢または安楽椅子姿勢など身体全体の筋肉が弛緩しやすく、体位が崩れにくい自然な姿勢で、一般に開眼とする。
- 背景公式(安静練習)
「気持ちが落ち着いている」 - 第1公式(四肢重感練習)
「両腕両脚(あし)が重たい」 - 第2公式(四肢温感練習)
「両腕両脚(あし)が温かい」 - 第3公式(心臓調整練習)
「心臓が静かに規則正しく打っている」 - 第4公式(呼吸調整練習)
「とても楽に呼吸(いき)をしている」 - 第5公式(腹部温感練習)
「おなか(胃のあたり)が温かい」 - 第6公式(額涼感練習)
「額が心地よく(こころよく)涼しい」 - 1回の練習時間は3-5分程度でよいが、1日3〜4回は行うほうがよい
最後に、自立訓練法を終えるときは、「消去動作」を行いましょう。
「消去動作」とは、意識や身体の感覚を通常レベルに引き上げる動作のことを言います。
次をご覧ください。
- 両手の開閉動作を4,5回
- 肘の屈伸動作を4,5回
- 背伸びをしながら深呼吸を行い、最後に目を開く
以上が自立訓練法の進め方です。
イップスを早期に克服するためにもぜひ試してみてはいかがでしょうか。
2-4.チームメイトに相談する
以降は、筆者の見解として、イップスの克服方法について紹介します。
イップスを克服するためには、チームメイトに相談するのも有効かもしれません。
なぜなら、イップスは、技術的な問題だけではなく、精神的な問題も影響しているからです。
しかし、「チームメイトには、相談しにくい…」という方もいるでしょう。
その場合、次のような相手に相談するのも選択肢のひとつかもしれません。
- 両親や兄弟
- 友人
- 以前のチームメイト
チームメイトなどに相談することは、イップスを克服するためのきっかけになるかもしれません。
ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
2-5.キャッチボール相手を変える
普段、同じ相手とキャッチボールをする機会がほとんどでしょう。
なので、一度キャッチボールの相手を変えることによって、何かのきっかけになるかもしれません。
なぜかと言うと、キャッチボールの相手を変えることによって、気分転換になったり、投げやすかったりする場合があるからです。
「普段、キャッチボールをしている相手に申し訳ない…」
という後ろめたさもあるかもしれません。
しかし、キャッチボールの相手を変えずに新しいきっかけが生まれることはありません。
ぜひ一度、キャッチボールの相手を変えてみましょう。
3.まとめ

ここまでイップスの克服方法について紹介してきました。
本記事で紹介したイップスの克服方法を次にまとめています。
ぜひ参考にしてください。
- 早期に暴投の原因を精神的なものと思うこと
- 時間的な間を置く
- 自律訓練法,動作訓練法およびカウンセリング法
- チームメイトに相談する
- キャッチボールの相手を変える